外壁塗装について
塗りの腕は養生に出る!塗装の養生作業
外壁塗装や屋根塗装を行うときに欠かせない工程のひとつが「養生(ようじょう)作業」です。
塗装の主役はもちろん「塗ること」ですが、実は美しい仕上がりと品質を左右するのは“養生”の丁寧さにあります。
ここでは、養生作業の役割や重要性、そしてプロが実践している美しく仕上げるための秘訣を詳しく解説します。
1. 養生とは?塗装前の“下準備”のこと
養生とは、塗料が付いてはいけない部分をビニールシートやテープなどで覆い、保護する作業のことを指します。
家の塗装工事では、たとえば次のような部分を養生します。
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窓ガラス・サッシまわり
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玄関ドアや玄関タイル
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照明器具・換気口
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エアコンの室外機
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フェンスなど
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塗料は液体なので、わずかな風やハケの動きでも飛び散り・垂れ・にじみが起こります。
そのため、塗装作業の前にしっかり養生を行うことで、周囲を汚さずに美しく仕上げることができるのです。
2. 養生の目的は「保護」と「美観」の両立
養生の目的は大きく分けて2つあります。
①塗料の飛散を防ぎ、建物や家具を保護する
スプレーガンやローラーで塗料を塗布すると、風や空気圧によって塗料の細かな粒子が飛びます。
そのままにしておくと、窓ガラスや車、隣家の壁などに塗料が付着してしまう危険があります。
とくに隣家との距離が近い住宅街では、飛散防止ネットやビニールシートを丁寧に設置することが不可欠です。
万が一、隣の家や車を汚してしまうとトラブルにもつながります。
つまり養生は、家を守るだけでなく、近隣トラブルを防ぐ大切なマナーでもあるのです。
②ライン(境界)を美しく仕上げる
養生テープは、塗る部分と塗らない部分の“境界線”をきれいに出すためにも使われます。
たとえば外壁とサッシの間や、雨樋と壁の接点など、境界が曖昧だと仕上がりが雑に見えます。
しかし職人がまっすぐ・均一にテープを貼ることで、塗り終えたあとにシャープで美しいラインが生まれます。
これはまさに、プロの技術と丁寧さの象徴です。
3. 養生を怠るとどうなる?
養生作業をおろそかにすると、次のようなトラブルや仕上がり不良が発生します。
①塗料の飛び散り・付着トラブル
風に乗って塗料が車や植木に飛び、後から拭き取れない汚れになるケースがあります。
一見小さなミスでも、お客様にとっては大きな不満につながります。
② ラインのにじみ・ムラ
テープの貼り方が甘いと、塗料が隙間に入り込み、「にじみ」や「はみ出し」が発生します。
仕上がりが雑に見え、せっかくの塗装の価値が半減してしまいます。
③サッシや玄関まわりの汚れ
細部を保護していないと、アルミサッシや玄関タイルなどに塗料が付着してしまい、掃除しても落とせないことがあります。
結果的に補修や清掃に余計な手間がかかるのです。
4. プロが実践する養生のポイント
養生作業は単に「覆う」だけではありません。
素材・場所・気温に合わせた工夫と経験が必要です。ここではプロが行う代表的なコツを紹介します。
① 養生テープの選び方
テープには粘着力の強いもの・弱いもの、屋外用・屋内用などさまざまな種類があります。
たとえばアルミサッシやガラスなど傷つきやすい素材には、粘着力の弱いマスキングテープを使用します。
逆に外壁のザラザラした面には、強粘着タイプを使うことで密着性を高めます。
この「素材に合わせたテープ選び」が、仕上がりを左右するポイントです。
② 隙間を作らない丁寧な貼り方
テープの端を少しでも浮かせて貼ると、そこから塗料がにじみ込みます。
職人は、指先でしっかりと押さえながら、一定の力加減でまっすぐに貼る技術を持っています。
特にコーナー部分や段差のある場所では、柔軟にテープをカットして貼り合わせ、隙間を作らないようにします。
③ 風・湿気・気温への配慮
風が強い日はビニールがめくれやすく、湿気が多い日はテープが剥がれやすくなります。
そのためプロは天候を読みながら施工計画を立てるのです。
たとえば、朝露が乾いてから作業を始める、雨の前日は養生を外しておくなど、経験に基づいた判断が求められます。
④ 養生の撤去タイミング
養生は「貼るとき」だけでなく、「剥がすタイミング」も重要です。
塗料が完全に乾いてしまうと、テープを剥がす際に塗膜が一緒に剥がれることがあります。
そのため、半乾きのうちにテープを丁寧に外すのがベスト。
このタイミングの見極めが、ムラのない美しい仕上がりにつながります。
5. 養生で仕上がりに差が出る理由
「塗りの腕は養生に出る」と言われるほど、養生は仕上がりを左右します。
養生が雑な現場では、塗料のはみ出しや汚れが残りやすく、完成後の見た目に統一感がありません。
一方で、養生が丁寧な職人の仕事は、ラインが美しく、全体の印象が引き締まります。
また、養生をきっちり行うことで作業効率も上がります。
周囲を気にせず思いきりローラーや吹き付けを使えるため、ムラの少ない均一な塗膜を作ることができるのです。
つまり、「手間を惜しまない養生」=「塗装品質の向上」につながります。
6. まとめ:養生は職人の“心”が表れる部分
養生作業は、お客様からは見えにくい工程ですが、職人にとっては最も重要で誠実さが問われる作業です。
たとえ塗料や道具が一流でも、養生をおろそかにすれば、美しい仕上がりは得られません。
逆に、細部まで丁寧に養生された現場は、仕上がりの美しさだけでなく、
「この職人なら安心して任せられる」という信頼にもつながります。
外壁塗装を検討している方は、見積もり時に“養生の丁寧さ”を確認することが、良い業者を見極めるポイントにもなります。
工事の前に、「どこまで養生しますか?」「近隣への飛散対策はどうされていますか?」と質問してみるのもおすすめです。
美しい仕上がりの裏には、必ず“丁寧な養生”があります。
それは職人の経験と心遣いが生み出す、見えないけれど最も大切な技術なのです。